
マダミスとTRPGは何が違う?
「マダミスを調べていると、なぜかTRPGって言葉も一緒に出てくる——結局どう違うの?」。名前は似た文脈で語られますが、遊びの構造はけっこう違います。まずTRPGがどんな遊びかを軽く押さえたうえで、早見表と7つの観点でスッキリ整理しましょう。案内役は物知りカラスのイマクロウと、好奇心旺盛な猫のミス・マダムです。
そもそもTRPGってどんな遊び?

マダミスのことを調べてると、しょっちゅう「TRPG」って言葉が出てくるのよね。似たものなのかしら?

親戚みたいなものではある。しかし遊びの"かたち"は微妙に違う。違いを話す前に、まずTRPGがどんな遊びか、ざっくり流れを見てみようか。
**TRPG(テーブルトーク・ロールプレイングゲーム)**は、ひとことで言えば「会話でRPGを遊ぶゲーム」です。ドラクエやFFのようなRPGを、画面のかわりに人の会話と想像力で進めていくイメージです。おおまかな流れはこうです。
- プレイヤーはそれぞれ、自分の分身となるキャラクターを作る(職業・能力・性格などを決める)。
- **GM(ゲームマスター)**が「森の奥に古い館が見えてきた」のように状況を語る。
- プレイヤーは「扉を調べる」「話しかける」などやりたい行動を宣言する。
- 成否が微妙な場面では**ダイス(サイコロ)**を振り、出目で結果が決まる。
- これを繰り返して物語を進め、時には同じキャラで何度もセッション(プレイの回)を重ねて冒険を続ける。

なるほど、みんなで力を合わせて冒険する感じなのね。マダミスの「疑い合う」空気とはずいぶん違いそう。

いいところに気づいたな! まさにそこが最大の違いだ。全体像を早見表で見てから、ひとつずつ解説していこう。
この記事での「TRPG」について
TRPGにはクトゥルフ神話TRPG(CoC)をはじめ数えきれないほどのシステムがあり、遊び方も多彩です。ここでは初心者向けに「もっとも一般的な遊び方」を想定して、マダミスとの違いを整理します。なお、人狼ゲームや脱出ゲームも含めた比較はマダミスと人狼・脱出ゲームの違いで早見表にまとめています。
マダミスとTRPGの違い早見表
まずは全体像から。細かい話は表のあとで、ひとつずつ噛み砕いていきます。
| 観点 | TRPG | マーダーミステリー(マダミス) |
|---|---|---|
| プレイヤーの関係 | 基本は協力。情報を出し合い、仲間として挑む | 対立や駆け引きを含む。手の内を隠し、各自の目的を追う |
| 立ちはだかる「敵」 | 世界・状況・難所(GMは進行役) | 同席するプレイヤー同士(GMは中立の調停役) |
| キャラクター | 自分で作り、セッションを越えて育てる分身 | シナリオ側が用意した役を選んで演じる |
| 物語 | みんなで即興的に作っていく | 大枠は決まっており、分岐を含みつつたどる |
| GMの役割 | 世界を描き進行する要(原則必須) | 進行・裁定役。GMレス作品なら不要なことも |
| ランダム性の源 | ダイスやカードの運 | 人の感情や選択が生む読めなさ |
| 繰り返し | 同じキャラで何度でも続けられる | 真相を知ると再プレイ不可(基本は一回) |

こうして並べると、けっこう別物ね!

そういうことだ。ここからは表の中身を、ひとつずつ詳しく見ていこう。
違い① プレイヤーの関係——協力か、対立か
いちばん本質的な違いが、プレイヤー同士の関係、つまり「情報をどう扱うか」です。
TRPGでは、手がかりや自分の考えを開示して共有し、みんなで協力して難所や事件に立ち向かうのが基本です。仲間と手札をさらし合い、知恵を出し合って前へ進みます。
いっぽうマダミスでは、各プレイヤーが自分だけが知る秘密や、他人には言えない目的を抱えています。情報は隠し、小出しにし、時に偽る。犯人役はもちろん、そうでない人も自分の秘密を守るために駆け引きします。ここでの緊張は、プレイヤー同士のあいだに生まれます。
「対立」は険悪という意味ではありません
これはあくまで構造の話で、TRPGのGMがプレイヤーの敵、という意味ではありません。近年のTRPGはGMを進行役・演出役とする協調的な遊び方が主流です。マダミスの「対立」も、あくまでゲーム内の役割としての駆け引きで、卓を囲む人同士は仲良く楽しむのが前提です。
違い② 立ちはだかる「敵」——世界か、人か
情報の扱いが違えば、「誰と戦っているのか」も変わります。
TRPGで立ちはだかるのは、モンスターや難所、あるいは解くべき事件の状況——いわば**「世界」そのものです。プレイヤーは一丸となって、その手ごわい世界に挑みます。構造としてはプレイヤーたち 対 世界**で、GMは世界を描く進行役であって、プレイヤーの敵ではありません。
マダミスで向き合う相手は、同じ卓を囲むプレイヤー同士です。誰が本当のことを言い、誰が何を隠しているのか——その探り合いそのものがゲームになります。GMは物語を進める側ではなく、ルールを裁く中立の調停役に近い立場です。

TRPGは「みんな対 世界」、マダミスは「プレイヤー 対 プレイヤー」ってことね。

おおむねそういう傾向、と思ってもらえれば。もともと両者を分けていた一番の線引きが、この2つなんだ。
違い③ キャラクター——育てるか、演じるか
キャラクターとの向き合い方も対照的です。
TRPGのキャラクターは、**自分でゼロから作る「自分の分身」**です。能力や性格を決め、セッションを重ねるごとに経験を積み、装備を整え、育てていく愛着の対象になります。長く連れ添うほど思い入れが深まる、という楽しみ方です。
マダミスのキャラクターは、シナリオ側があらかじめ用意した役の中から選ぶ(または割り当てられる)ものです。名前も過去も動機も物語の一部として設計されていて、プレイヤーはその役をその一回のために演じ切ります。事前のキャラ作りが不要なぶん、準備ゼロで物語の中心に立てる——コストパフォーマンスのよいエンタメとも言えます。

自分だけの相棒を育てるか、用意された役に一度きり全力でなりきるか。どっちも良さがあるわね。

そう。マダミスは「役が最初から用意されている」おかげで、必ず自分にも物語上の見せ場が回ってくるのがうれしいところだな。
違い④ 物語——みんなで作るか、たどるか
物語の「決まり具合」も違います。
TRPGは**「みんなで物語を作る」**のが前提です。GMが用意するのは舞台と大枠で、プレイヤーの選択次第で展開は大きく変わり、結末すら事前には決まっていないことも多い。即興性が魅力です。
マダミスは、多少の分岐はあっても基本は**「決まっている物語をたどる」**前提です。真相はあらかじめ用意されていて、プレイヤーはそこへ向かって推理し、役を演じます。物語が固定されているからこそ、GMがいなくても成立する「GMレス」作品が作れるのも、マダミスならではです。
ここがマダミスらしさ
物語のゴール(真相)が決まっているから、シナリオが「体験の質」を保証してくれます。だれと遊んでも一定の面白さが担保されやすいのは、たどる型ならではの強みです。
違い⑤ ランダム性——ダイスか、人の感情か
最後は「予想外」の生まれ方です。
TRPGの予想外は、おもにダイスやカードの引き——つまり運から生まれます。運という不確定要素があるからこそ、プレイヤーは確率を読み、リスクを取るか避けるかを考える。ここには**「ゲームとしての」戦略的な面白さ**があります。
マダミスにはダイスがないことも多いのですが、別のランダム性があります。それは人の感情です。あの人が本当のことを言うのか、とっさに誰をかばうのか、土壇場で裏切るのか——その場の人間の選択が、シナリオ通りにいかない予測不能な展開を生みます。

サイコロの代わりに、人の心がサイコロになる、みたいな?

いい例えだ。同じシナリオでも、メンバーが変われば結末の"温度"がまるで変わる。これが、マダミスに病みつきになる人が続出する理由だな。
違い⑥ GMの立ち位置——語り手か、審判か

GM(ゲームマスター)の役目も、ずいぶん違いそうね。

うむ。TRPGのGMは、世界を描いて物語を前に進める"語り手"。いなければ始まらない、原則必須の存在だ。
TRPGのGMは、舞台を用意し、敵やNPCを動かし、判定を裁く——物語進行の中心です。対してマダミスのGMは、物語そのものはシナリオに書かれているため、おもに進行と裁定を担う中立の審判役にとどまります。だからこそ、GMを立てなくても遊べる**「GMレス」作品**が数多く存在します。
初心者にGMレスがうれしい理由
GMレス作品は、慣れた人が場を仕切らなくても、集まったメンバーだけで遊べます。「まず一回やってみたい」という初心者同士でも始めやすいのが魅力です。
違い⑦ 繰り返し——続けられるか、一度きりか

気に入ったシナリオは、何度も遊びたくなりそう。

それが、マダミスだとそうもいかない。
TRPGは、同じキャラクターで何度もセッションを重ね、長い物語(キャンペーン)を続けていけます。いっぽうマダミスは、真相を知ってしまうと初見の驚きが失われるため、同じシナリオを繰り返し遊ぶことは基本ありません。この一回性こそが、マダミス最大の合言葉「ネタバレ厳禁」の理由です。裏を返せば、その一度きりに全力を注げる——それもまたマダミスの醍醐味です。
近年は境界が溶けつつある
ここまで7つの違いを挙げてきましたが、実はいま、TRPGとマダミスの境界は溶け始めています。
- あらかじめメイク済みのキャラクターを配って遊ぶTRPG
- ランダム性でシナリオが分岐するマダミス
- 推理と協力、どちらの要素も併せ持つハイブリッドな作品
こうした作品が次々に生まれ、「これはTRPG? それともマダミス?」と一言では言い切れないものが増えています。

せっかく違いを整理したのに、混ざってきてるのね……!

むしろ自然なことなんだ。日本マダミス界でもはや「古典」とも言える「狂気山脈」も、もとはクトゥルフ神話TRPGの重厚なシナリオ。最初から両者は地続きだったのさ。
大切なのは、ジャンルの名前で線を引くことより、その作品がどんな体験をくれるかです。違いは「入口を選ぶときの地図」くらいに考えておくと、ちょうどいいでしょう。
「たどるだけで面白いの?」への答え
ここまで読んで、こんな疑問がわいたかもしれません。

物語が決まっていて、それをたどるだけ……。それって、ひとりで本を読んだり映画を観たりするのと、何が違うのかしら?

——おもしろいのだ、それが!
決まっているのは物語の大枠だけ。その中で、誰を信じ、何を隠し、どの瞬間に本音を明かすかは、あなた自身の選択です。あなたは物語を「観る」観客ではなく、物語を内側から動かす当事者になります。同じシナリオでも、卓を囲む人が違えば結末の手ざわりはまるで別物——だからこそ、たどる型でも一回ごとに唯一無二の体験になるのです。
この「なぜ、たどる物語がこんなに面白いのか」は、それだけで一本の記事になるテーマです。続きは マーダーミステリーはなぜこんなに面白い? で、その面白さの正体をじっくり掘り下げています。
まずは一作、遊んでみる
違いを頭で理解するより、一度体験してしまうのがいちばんの近道です。初心者向けの遊びやすい作品から、気軽に飛び込んでみてください。